停滞のループを断ち切る「問い」
創造力と行動を引き出すコーチングの声かけとは
コーチングにおける「問い」は、
人を前に進めることもあれば、
逆に静かに立ち止まらせてしまうこともある。
その分かれ道は、とてもシンプルだ。
問いが
「過去の原因」に向いているか
それとも
「未来の可能性」に向いているか。
問いは単なる会話の技術ではない。
脳の注意・感情・行動エネルギーの向きを切り替えるスイッチでもある。
この記事では、
なぜ問いが人を止めてしまうのか、
そしてどうすれば人の脳が自然に動き出すのかを、
脳科学とコーチングの視点から整理し、
今日から使える形に落とし込んでいく。
目次
- なぜ「正しい問い」が人を止めてしまうのか
- 小さな実例:問いが行動を止めた瞬間
- 人を止める問いと、人を動かす問いの決定的な違い
- 脳が動き出す「未来の問い」の科学
- 今日から使える「人を動かす問い」の具体例
- 問いの力を高める「距離」という発想
- まとめ
- あなたへの問い
1. なぜ「正しい問い」が人を止めてしまうのか
「なぜできなかったんだろう?」
「何が問題だったんだと思う?」
一見すると、正しく建設的に見える問いだ。
実際、多くの現場で無意識に使われている。
しかし、こうした問いは時に、
相手の思考と行動を静かに止めてしまう。
過去の原因を問われた脳は、
失敗・後悔・自己防衛の回路を優先的に使い始める。
その結果、
新しいアイデアを生み出す前頭前野の働きが弱まり、
「これ以上考えても意味がない」という感覚が強くなる。
反省しているようで、
実は前に進めなくなっている状態だ。
2. 小さな実例:問いが行動を止めた瞬間
あるチームでの出来事を想像してほしい。
目標を達成できなかったメンバーに、
リーダーはこう問いかけた。
「なぜ、今回は達成できなかったと思う?」
メンバーは答える。
「準備不足でした」
「時間配分が甘かったです」
反省の言葉は並ぶ。
しかし、その後の行動はほとんど変わらなかった。
このとき脳は、
「過去を説明する」ことにエネルギーを使い切っており、
「次にどうするか」を考える余白が残っていなかった。
問いが行動の入口ではなく、
思考の袋小路を作ってしまっていた。
3. 人を止める問いと、人を動かす問いの決定的な違い
重要なのは、
問いをやめることではない。
問いの向きを変えることだ。
人を止めやすい問いには、共通点がある。
・過去に向いている
・原因を探している
・評価や正解を含んでいる
例
・なぜできなかったのか
・何が悪かったのか
・どうしてもっと早くやらなかったのか
一方、人を動かす問いは、
未来・選択・行動に焦点が当たっている。
4. 脳が動き出す「未来の問い」の科学
「次に、何を試してみる?」
「どんな小さな一歩なら踏み出せそう?」
こうした問いを投げかけられた脳は、
自然と未来のイメージを描き始める。
未来を想像するプロセスでは、
前頭前野が活性化し、
同時に「できそうだ」という予測が立ち上がる。
このとき、
行動と結びついた報酬系が刺激され、
やる気や集中力が戻ってくる。
問いは、
モチベーションを与えるものではない。
モチベーションが生まれる回路を開くものだ。
5. 今日から使える「人を動かす問い」の具体例
行動を引き出す問い
・次に何を試してみる?
・今の自分でもできる一歩は何だろう?
可能性を広げる問い
・もし一つだけ変えられるとしたら、何を変える?
・他にどんなやり方が考えられる?
リソースを思い出させる問い
・これまで似た状況をどう乗り越えてきた?
・自分の強みを使うとしたら、何ができそう?
共通点は3つ。
責めない・評価しない・未来を向いている。
6. 問いの力を高める「距離」という発想
良い問いは、
考える内容だけでなく、
考える距離もデザインしている。
距離が生まれると、
人は感情から一歩離れ、
全体を見渡せるようになる。
時間の距離
「半年後の自分なら、今の状況をどう見るだろう?」
視点の距離
「信頼している人がこの状況を見たら、何と言うだろう?」
仮想の距離
「理想に近づいているとしたら、何が変わっている?」
距離は、
思考に余白を生み、
新しい選択肢を見せてくれる。
7. まとめ
問いは、人を動かすことも、止めることもできる。
過去の原因を問う問いは、
思考を内側に閉じ込めやすい。
未来の可能性を開く問いは、
脳を前に向かせ、
行動の回路を再起動させる。
大切なのは、
正しい問いを探すことではない。
相手の脳がどちらを向くかを意識することだ。
あなたへの問い
今日の対話で、
あなたはどんな問いを投げてみるだろうか。
過去を説明させる問いか。
未来を開く問いか。
その違いが、
次の一歩を静かに決めていく。